条文とその主旨
第9条 条文
第9条(戦争の放棄、戦力及び交戦権の否認):
① 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
前回に引き続き憲法第9条に関する重要判例を紹介します。
今回は自衛隊のために国が土地を購入することの合憲性について争った事件です。
それでは見ていきましょう。
重要判例
百里基地訴訟 最判平元・6・20
事件概要
この事件の内容は、、、
百里基地の基地建設予定地を所有していた住民Aが、一度は基地反対派の住民に土地を売ったが、代金の完全な支払いがなされないため、契約を解除。
その後に住民Aは国に土地を売ったが、それに対し反対派の住民が
「自衛隊は憲法9条に違反しており、憲法98条に照らしてこの売買契約は無効だ」
と主張したものです。
参考条文(憲法98条)
第98条(最高法規、条約及び国際法規の遵守):
①この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
②今回は省略します
1審、2審判決
この件について、まず第1審では統治行為論により自衛隊の合憲性について憲法判断を避けました。
次に第2審では民法90条に違反するかの問題に過ぎず、憲法判断を必要としないとしました。さらに民法90条(以下記載)にも違反しないため、国との売買契約は有効としました。
参考条文(民法90条)
民法第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
いわゆる「公序良俗違反」というやつです。
最高裁判決
最高裁も1審、2審の判決を支持して、「憲法判断は不要、上告を棄却」という判断をしました。
以下判決文の抜粋です。
憲法九八条一項は、憲法が国の最高法規であること、すなわち、憲法が成文法の国法形式として最も強い形式的効力を有し、憲法に違反するその余の法形式の全部又は一部はその違反する限度において法規範としての本来の効力を有しないことを定めた規定である
(中略)
国の行為であつても、私人と対等の立場で行う国の行為は、右のような法規範の定立を伴わないから憲法九八条一項にいう「国務に関するその他の行為」に該当しないものと解すべきである
「憲法98条第1項には、憲法に違反する国の行為は無効と書いてあるけど、そもそも一般人と国が対等な立場で行った売買は、公権力を行使したわけではないから、98条条文の【国務に関するその他の行為】にはあたらないよね」
ということですね。
憲法九条は、その憲法規範として有する性格上、私法上の行為の効力を直接規律することを目的
とした規定ではなく、人権規定と同様、私法上の行為に対しては直接適用されるものではないと解するのが相当であり
「憲法9条の平和主義とは平和を目指すという抽象的概念ですよ?私人間の取引(売買行為など)に直接適用するのはおかしいでしょう?」と言っていますね。
私法的な価値秩序のもとにおいては、自衛隊のために国と私人との間で、売買契約その他の私法上の契約を締結することは、社会的に許容されない反社会的な行為であるとの認識が、社会の一般的な観念として確立していたということはできない。
「自衛隊のために、国が一般人と何らかの契約を結ぶことが、一般的に反社会的行為と思われている、なんてことはないでしょう?」
まとめ
ということで、以下に結論をまとめます。
①私人と対等の立場で行う国の行為は、「国務に関するその他の行為」に該当しない。
(よって憲法98条違反ではない)
②特段の理由がない限り、憲法9条は、私法上の行為に対しては直接適用されない。
③「国が自衛隊のために私人と私法的な契約を結ぶこと」が反社会的行為だと、社会の一般的な観念として確立していたということはできない。
(よって民法90条にも違反しない)
公権力を行使する立場としての「国」と、例えば国の機関で使われる備品などを買う立場での「国」は違うということが分かりましたね。
2回にわたった9条の重要判例でしたが、もっと判例が多い条文もやってきます。
頑張って紹介しますので、これからもよろしくお願いします(^o^)

